mirage of story
〜7〜






「おぉ、ジェイドの兄ちゃん!
さっきの嬢ちゃん達の様子はどうだい?」




穏やかな午後の日が差す宿屋。

そんな中でのんびりと長椅子に座ってくつろいでいたこの宿屋の店主。
そしてもう一つ同じ空間に在る影は、この宿屋にもう数日世話になっている客の男。

数日とはいえ随分と親しい仲へとなってきた客の男、つまりジェイドに店主は話し掛ける。











「ん?
あぁ、あの二人ならまだ仲良く揃って夢の中だと思うぜ?

ハハッ!
まぁだいぶ疲れてたみたいだからな?
様子見に行ったら二人仲良く眠ってたさ。
ったく、羨ましい限りだねぇ!」




ジェイドはわざとらしく羨ましがる身振りをして、それから笑う。

ッ。その様子を見て男は苦笑いをする。








「兄ちゃんだって、女から好かれそうな顔してんじゃねぇか!
女の一人や二人居るんじゃねぇのか?ん?

俺なんか見てみろ。
この歳になっちまったら、女の一人の寄り付きゃしねぇよ!ガハハッ!」



「何言ってんだよ、親父さん?
そんなこと言ってると、また奥さんに怒られるぜ?」



「ッ!........そりゃ恐ろしい、恐ろしすぎる。
兄ちゃん、今の発言は無しってことでいいな?」




店主は焦ったように肩を竦めた。

実はこの店主の男の妻はかなりの恐妻。
数日宿泊するジェイドは何回かその妻の前で小さく背中を丸めている店主目撃しているのである。







「んー......じゃあ、葡萄酒一杯で手を打とう!」



意地の悪い笑みを浮かべて言う。






「うーむ、仕方ねぇ!背に腹は代えられねぇってことだな!

よし交渉成立!
ってことで、さっきの発言は無しな?頼んだぜジェイドの兄ちゃんよ?」







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