mirage of story
(アイツだけは絶対に許さない)
シエラにはこの一年、旅をしていく中でロアルについて分かったことが幾つかあった。
まず一つ、ロアルというの正体。
ロアル。それは魔族を従える王の名前。
何処か遠くの土地にある魔族の大国。その頂点にあの男は立っていた。
そしてもう一つ、ロアルの陰謀。
あの男が何を考えているのか。それが分かった時、シエラは驚愕した。
ロアルは歴代の魔族の王の中で最も人間を嫌う王だった。
彼は人間を憎み、その人間を滅ぼすための力を求めている。人間を根絶やしにするために。
その陰謀のためにロアルはシエラの持つ指輪を狙っているのだという。
そしてこの指輪は、人間を滅ぼすための鍵となっているらしかった。
詳しくは未だに分からないのだけれど、シエラの持つ指輪がロアルの陰謀に深く関わっていることだけは間違いはないようだった。
(人間を滅ぼすだなんて、絶対にそんなことさせない。
これ以上哀しみを増やしたくない。増やしちゃいけないのよ。
だから.....)
だから。
だから私はまた旅に出る。
哀しみを増やさないために。
そしてエルザの仇を討つために。
自分に出来ることを、すべきことをするために。
「母さん。
私、そろそろ行くよ」
シエラはゆっくりと立ち上がった。
(.........絶対に目的を果たして、母さんの元へと帰ってくるから)
シエラは決意を胸に、濃い暗闇の中をゆっくりと去っていく。
強い決意の余韻。
それは丘に吹き抜ける風にも流されることなく、暫らくそこに在り続けていた。