mirage of story
ルシアスがあの指輪を誰かに渡したのか?
いや、それはないだろう。
あの指輪はルシアスと共に生きている。
古くから伝わる≪水竜の指輪≫は≪竜刻の指輪≫のうちの一つだ。
≪竜刻の指輪≫は、強い魔力を持つ魔族にしか扱えず、指輪は指輪と契約を交わした者の力の源になる。
ルシアスは、その≪水竜の指輪≫との契約者だった。
契約者と指輪に宿る竜は命の契約を交わす。
故に契約者が自らの指輪から引き離された時、契約者は次第に魔力を失い、最後には。
(その最後に在るのは.....死)
そのルシアスの命とも言える指輪を持っているルシアスとは別の少女が見つかった。
それは残酷にも、ルシアスの死を確定づける事実。
そして彼女が生きていることを信じて探し続けていたライルを、絶望へと突き落とす現実でもあった。
(.........一体、何者だ)
「......何でその娘がルシアスの―――あの指輪を持っているんだ」
ライルは自分の瞳に溜まる涙がこぼれ落ちないように、必死に堪えた。
「それは私にも分からぬ」
王である男は、ほんの一瞬ライルを哀れむような視線を送った。
だがその視線はすぐに逸らされ、男の顔から表情は消え失せた。
そして尚、男は続ける。