mirage of story





「―――私の推測ではあるが、その現在指輪を持つあの娘があの戦乱の中に指輪を奪い姫の命をも奪った。
そう私は見ている。

考えてみよ。
あの指輪は姫が肌身離さず持っていた物。そう簡単に盗むことなど出来ぬだろう?」





「.....でもただの人間にそんな力はないはずっ!
ルシアスの魔力に、人間なんかが適うわけが――――」






ルシアスの魔力は強大だ。

指輪との契約者。
それは並大抵の魔力の持ち主では叶わぬことであり、強き力を持つ選ばれた物のみがその契約者となれる。

普通の魔族ですらルシアスには適わない。
ましてや何の力もない人間が力でルシアスに対抗するなどということは出来ないはずだ。






「だがな、ルシアス姫が姿を消したのはあの戦乱の時だ。

あの残忍な人間どものこと。
一人でいる魔族の姫を見つけたら放っておくことはないはずだ。ましてや、戦乱で傷つき弱っていたのなら尚更だ。
そうであろう?」





そう言う言葉に、妙に説得力を感じた。

それはこの王である男の持つ、独特な威圧感が生み出したものかもしれなかったが、この時のライルの心にはこの男の言葉がじわりと染み渡った。






(.....。
確かにそうだ。
ルシアスはあの戦乱の時、俺たちと共に戦い傷ついていた。
俺はルシアスを追っ手から逃がして....そしてルシアスはそのまま姿を消した)



――――。
ということは。




(本当に、その指輪を持つ娘がルシアスを?)




 


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