mirage of story
ッ、―――!
ライルは纏う殺気を更に濃くして叫ぶ。
「ほう......つまり隊長は、遥か昔に死んじまった惚れた女のことを未だに忘れられてないってことですか。
嫌だ嫌だ、未練がましい男ってのは」
「!?」
「........だ、か、ら!未練がましいって言ってるんですよ。
俺が部隊に居た時も、そうだった。隊長....あんた何も変わってない。
前も今も姫さんのためだと言いながら結局は自分の傷を埋めるために周りを責めて自らを正当化している......ただの子供だ」
「ッ!
俺はルシアスの仇を討つそう決めた!俺自身のためなどじゃない!
人間は悪。
俺がしていることが間違いだとは思わない!」
言葉に熱が帯びていく。
感情的な彼の声は鋭くそして至極哀しく、周りを取り巻く闇に響き渡る。
「だから、その仇を討つって考えが未練がましいんだ。
ルシアス姫さんは、彼女はもう死んだ。
ライル.........お前いい加減その事実を受け入れろ、彼女のことは忘れろ。
これは俺からの───友としての忠告だ」
二人の会話。
それは敵同士の、そして共同士の会話。
「黙れと言っている!
俺を裏切り、魔族を裏切った反逆者のお前に分かったようなことを言われたくはない!」
「あらら?
組織の縁は切れても、友の縁は切れてねぇと思ってたんだがなぁ....」
ジェイドはそう言うと、わざとらしく驚いた表情を見せる。
「......勝手に言っていろ。
俺にはお前に付き合ってる暇など無い!
お前は黙って、あの女の最期を見ておけばいい。
その次はジェイド、お前の相手をしてやる」
ッ。
ライルはフッと嘲るように笑うと再びジェイドに背を向けた。
やはり彼の意識は彼女から離れられないらしい。
それ程までに、彼が彼女に抱く憎しみが強いということか。
カッ。
彼はジェイドを無視して、離れたところで戦いを続ける彼女の元へと歩き出す。
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