mirage of story







ライルは沸き上がる感情を抑え聞いた。






「それは確かなことなのでしょうか?」




........。





「確証はない。
だが人間とはそういうものだ。

.....我々は姫のためにも人間たちを根絶やしにせねばいかん。
邪悪な人間どもから受けた姫の仇、魔族の屈辱を晴らさねばならない」



姫の仇。
魔族の屈辱。
その言葉を言う声が、心なしか強くなった。










「――――。
どうだ?我々と共に、姫の恨み果たそうではないか。
お前の大切なルシアス姫様の恨みを。
なぁライルよ」



ッ。
男がゆっくりと手を差し伸べた。








(......。
人間がルシアスを、何の罪もないアイツを殺したというのか?)





ライルの中のルシアスはいつも笑っていた。

強気な奴だった。
ちょっとうるさい奴だった。
だけど、いつも自分のことより先に相手のことを想う優しい人だった。

ルシアスはいつだって誰かが傷つくのを嫌っていた。
"ずっと平和が続くといい"そういつも言っていた。





そんな彼女を、人間は――――。

そんな平和を誰より望んでいたルシアスを殺した人間。
自分から大切な人を奪っていた人間。

ッ。
そんな身勝手な人間たちに、ライルの心の中には一つの闇に似た黒い燈が灯る。








(許さない)



それは復讐の燈。
黒く、めらめらとライルの心を焦がすように揺れる燈。










「.......俺には何が出来るんでしょう」



「私の元に来ればよい。
そして共に戦うのだ、人間どもと。奪うのだ、ルシアス姫を語るあの忌々しい娘からあの指輪を」







人間との戦いで、ライルは多くの大切なものを失った。

自分の家族、友達、故郷。そしてルシアス。



 


 

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