mirage of story
フッ。
そう言ってライルは自嘲気味に笑う。
それからその自嘲を押さえ込めるように、彼はスッと目を閉じた。
「────本当はお前の目が届かない所でジェイドと決着を着けるつもりだった。
だが、それが出来なかった。
.....あいつが反逆者で在る限り俺達はあいつと関わらなきゃならない。
そう、敵という形で」
暫くそこで言葉が空く。
「キトラ....お前にとってそれは辛いことだ。
それは分かってる。だがお前は、俺達魔族の誇る先鋭部隊の一員のお前はこれに向かい合う義務と責任がある」
―――――。
を閉じたまま、夜の闇に溶け込むような静かな言葉をキトラへと続ける。
「.........」
「聞いておきたいんだ。
大切な者とそしてこの現実と正面から向き合う―――キトラ、お前にそれが出来るか?」
静かに抑揚のある声が響く。
.......。ッ。
その言葉が放たれると同時に冷たい夜の風が辺りの木々を騒めかせ、騒めきがその抑揚を掻き消した。
「..........。
出来ます、隊長」
風が木々を揺らし、二人の頬を掠めて何処かへ過ぎ去る。
そして木の葉の騒めきが静かになった頃、キトラは静かに答えた。
「.........俺、兄貴にはっきりと言われちゃったんです。
お前はもう敵だって。
兄貴は俺を捨てたんだって、ようやく俺の心が認めました。
諦めが、付きました」
諦めが付いた。
その言葉と共に微かに震える手の平を自分の胸へと押し充てる。
トクン。
その胸の鼓動が手に伝わって、手の微かな震えは胸の鼓動で消されていた。
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