mirage of story
 
 
 






 
 
「俺、戦います。兄貴と」



手の平にいつもより少しだけ早い鼓動を感じて、彼ははっきりと言った。





「分かった」



キトラの様々な想いが籠もったその言葉。

ライルは目を閉じたまま、短く答えた。
目を閉じたままでも今キトラがどんな想いであってどんな表情で居るのかは分かった。


きっと哀しくて苦しくて、でもキトラのことだから無理に笑っているのだろう。
だから敢えて目を開けなかった。










「.....もし今度またあいつと対峙するようなことが在った時、その時はお前に頼もう」 



「───はい。任せてください、隊長」







煌めく月に冷たく包む夜の闇。
そして彷徨う、それぞれの想い。


この夜に似た闇の先に、この行き場のない想いの行先はあるのだろうか?

――――。
ふと湧いたそんな疑問と共に、二人は更け行く夜にそのまま身を委ねた。






 

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