mirage of story





 
 
 
 
 
「カイム.....」



彼女は傍で横たわる仲間の名を心配そうな声で呟く。






「大丈夫さ、嬢ちゃん。
ハハッ!こいつはそう簡単に死んだりはしねぇよ」




今にも泣きそうな程の震えた声を出す彼女。
ジェイドはそれを宥めるように、彼にしては珍しい穏やかな笑みを浮かべた。


―――。
そして暫く彼女を見る。
そしてそのままの笑みで続けて彼は言う。










「カイムは死なねぇ。
少なくとも、嬢ちゃんを置いては絶対になぁ?

.....こいつにとって嬢ちゃんは"守らなきゃいけないもの"なんだと。
そう宿屋で二人で話した時言ってたからねぇ」



「カイムが、そんなことを?」






ッ。守らなきゃいけないもの。
その言葉でシエラは思い出す。


昨日、カイムは傷だらけの身体でシエラに言った言葉。

───大丈夫、と。
俺は死なない......シエラを置いては絶対に、と。
今は眠る彼の言葉が脳裏に蘇る。




........。
そうだ。
彼なら大丈夫だ。

自分が信じなくてどうする。
カイムをどんな時でも信じていることが、仲間である自分の役目じゃないか。


脳裏に蘇る言葉に彼女は小さく拳を握り締める。









「───そうですね。
今は心配するより、カイムの傷が早く良くなることを信じなきゃ」



「その通りさ、嬢ちゃん?
その方がきっとカイムも喜ぶぞ?ハハッ!」







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