mirage of story
(仲間───)
魔族と人間が対立するこの世界で、普通ならば相手が自分たちと異なる者であるなら決して馴れ合いはしない。
ッ。シエラだってそうである。
相手が魔族というなら、ただそれだけで憎むべき相手に変換してしまう。
それなのに。
(それなのに........この人は何だか信じてもいい気がするわ)
自分でも不思議だった。
魔族だと分かっているジェイド。
そうであるのに、いつの間にか心を開いている。
魔族であるジェイドの存在を受け入れている。
(仲間か)
人間と魔族が手を取り合い仲間になる。
昔なら普通だったことが、今になっては想像もつかないことになってしまっていた。
(信じてもいいよね?)
シエラは改めて自分の目の前にいるジェイドを見た。
顔にはもう早くも見慣れてしまった軽い笑みを浮かべる彼。
――――。
多少何を考えているのか読めない男ではある。
だが仲間としてジェイドとカイムと共に行く自分の姿が彼女には想像が出来た。
.....。
想像出来た未来。
彼女心を固める。
「........いいえ。
嬉しいです、とても。
ジェイドさんが仲間になってくれるなら、とても心強いです」
「ハハッ!それならよかった!
........それじゃあ、これからもよろしく頼むよ嬢ちゃん?」
「は、はい!」
ッ。
シエラの答えを待っていたジェイドは、浮かべた笑みをより一層濃くした。
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