mirage of story
 
 
 
 
 
 
.......。

そして一瞬ほんの一瞬だけ間を開けてからもう一度今度は寂しげに呟く。







「....本当に恐ろしい奴だよ。あの男は」



何かを思い出すように笑いの張りついた表情のまま瞳だけ意味深に曇らせてジェイドは言った。





「......」



そのジェイドの矛盾した笑みをシエラは何も言わずにただ見つめた。


何かを秘めたようなその瞳は追及することを許しはしない。
だから敢えて何も聞かなかった。






ジェイドのことはまだよく知らない。
知るという前にまずジェイドが───彼が心を開いてくれていないのだから仕方ない。

彼が時折見せる陰。
それを包み隠さず見せることをまだ彼はシエラたちに許してはいなかった。



まだ会ったばかり。
言いたくないことの一つや二つはきっとある。

だけどこれから仲間になる。
だからその長い時の中でいつか彼が心を開いてくれるその時をシエラは待とうと....いや、待ちたいと思った。








「まぁ、どっちにしろあのおっさんがとんでもねぇこと考えてるってぇのは確かだな。
あのおっさんが抱える闇は他の奴とは比べられない......ずば抜けてる」 




暫く呟きが谺した後、ジェイドは場を切り換えるように一つ咳払いをして言う。







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