mirage of story
「.......」
その光景をジェイドは暫らく無言のままで見つめた。
気が付けば太陽はもう完全に顔を出していた。
その太陽に彼は少し眩しそうに目を細めると、目が疲れたのか太陽から逸らして腕の中に顔を埋める。
「あぁ.....俺、何をやってんだか」
そして埋めた腕の中で、目の前に広がる壮大な光景を前に何かを悟ったように呟く。
腕の中で曇り籠る呟き。
その呟きはあまりに唐突で言っている本人であるジェイドにも、何故そんな言葉が出たのか分からなかった。
何をやってんだか。
唐突に出てきたそんな言葉の裏に隠れた思い。
それは今、自分が此処に今居ることに対しての疑問。
自分自身が起こした自分自身理解出来ない行動に対する驚き。
(あの嬢ちゃん達が気に入ったからとはいえ、命懸けて逃がすだなんて俺らしくもねぇな)
ジェイドは深い息を吐く。
(確かにあのままあの場所に居りゃ、俺だって危なかったさ。
だがそれならいち早く嬢ちゃんたちなんて放っておいて逃げればよかった)
あの場所。
あの宿でキトラと鉢合わせた時点で、確かにジェイドはあの場所に長居は出来なかった。
自分は追われる身。
あのままあの場所に留まれば危険だったということは目に見えて分かる事実だった。
........。
あの場から逃げてきたのは間違った選択じゃない。
だがそれなら何故あの嬢ちゃんたちを連れてきた?
人数が多くなれば一人で逃げるよりリスクは高い。
しかも話を聞けば、彼女達は今ライルたちが血眼になって捜してる指輪を持つ者だというではないか。
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