mirage of story
〜1〜










「─────ッ」





......ドサッ。

扉の向こうで何か倒れるような音がした。






「......何だ？」　



その唐突に聞こえた音に、中に居たウトウトと夢の中に墜ちかけて居た一人の男はハッと顔を上げる。





「外からか？」




男は音のした扉の方を見据えて怪訝そうに首を傾げると凭れかかっていた椅子から重々しく腰を上げる。



........。
今男が居るこの場所は、魔族と人間の領地の境目辺りにある辺境の地。

此処は昔からずっと旅人や商人たちの旅の中継地として栄えている小さな村。
だがここ最近は魔族と人間の関係が悪化して治安が悪く此処を通る者はほとんど居らずに寂れている村。



.......そんな寂れた村は今魔族───ロアルの命によって魔族の軍の駐屯地となっていた。







そんな魔族の駐屯地。
質素であるがその基地となる小さな小屋の中にその男は居た。

男はこの地に駐屯している兵士のようだった。







────。コンコンッ。


その兵士の男は音の聞こえた扉に忍び足で近付く。
そして恐る恐る外の状況を確かめようと扉を叩いた。


そしてそのまま外の反応を確かめる。
......... 。
だが反応はない。









「気のせいか？」



反応のない扉の向こう。
男は首を傾げて扉を凝視する。

何の変哲もない扉。
やはり反応はない。







　

.
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