mirage of story
(一体、俺に何の用だろう?)
ずっと横になっていたせいか、ぎこちない動きの体を伸ばしながら、ライルは考える。
(......きっと俺がまた、奴等を取り逃がしたこと.....か)
一瞬考えて、その答えに辿り着いた。
ライルがロアルに呼び出されるのは、そう珍しいことではなかった。
ライルは王であるロアルに、隊長という立場を別にしてでも気に入られている。
先鋭部隊の他にも部隊はあるのだが、ロアルが他の部隊長を直々に呼ぶことは滅多にない。
ロアルは元々、人とは馴れ合わない主義の男。
その男が唯一、直に触れ合う者。それがライルだった。
だからロアルに呼ばれたからと言って、別に臆することなどないのだが
またも逃走者....指輪を持つ者を取り逃がしたという罪悪感もあって、いつになく緊張した。
「.....行くか」
気持ちを落ち着けるように深く息を吸うと、ゆっくりとその息を吐き出して
決意したように、部屋の扉を開けてロアルの待つ王の間へと、足を進めた。