mirage of story
ライルは悔しさと情けなさから、唇を噛み締めた。
そして辺りは、沈黙が支配する。
静かすぎる時が流れる。
「――――安心しろ。
今回の件でお前を罰するつもりはない。」
「.....え...」
沈黙を破ったのは、ロアルの低い声だった。
その言葉に、思わずライルはロアルを見る。
想像もしていなかったその言葉に、驚かずには居られなかった。
「ロアル様....それはどういう――――」
「言葉の通りだ。今、お前を罰したところで何の意味も為さん。
先鋭部隊.....国家を担う重要な任務の遂行を預けられるのは、お前をおいて他には居らんのだ。
お前には――――もっと働いてもらわねばな」
「――――ッ!」
「私はお前を信頼しておる。
その期待を、裏切らぬような結果を....指輪を持つ者を必ず捕らえよ。
私のため―――我等、魔族のために」
裏切ってはいけない。
そうだ。
ライルはこの国の....魔族を背負って戦っている。
ルシアスのためだけじゃない。
自分の為すべきことの結果に、魔族の未来が懸かっている。
その期待を....これ以上、裏切るわけにはいかない。
ルシアスのために、魔族のために。
そして、自分を信頼する.....偉大なる王のために。