mirage of story
「ロアル様――――どうかなされたのですか?」
明らかなるロアルの変化を感じ、ライルは恐る恐る問いた。
ライルの言葉に、暫らくは紙切れを見つめたまま黙っていたロアル。
だか、数秒経って顔を上げてライルを見据えた。
その顔は、いつもの無感情な表情へと戻っていたが、心なしか色褪せて見えた。
「.......その者を医務室に運ばせろ。
ライル。お前には話がある―――この場に残れ」
ロアルはライルの問いには答えずに、ただそう言った。
「は....はい、分かりました。
――――おいッ!誰か居ないか、急患だ!
誰か来いッ!」
有無言わせないロアルの表情に、ライルは一つ頷く。
そして、息も絶え絶えのあの兵の元に再び駆け寄り抱え込むと
長く続く城の廊下の先に向かって叫んだ。
そのライルの声を聞き付けたようで、城の中で休息を取っていた兵士たちが何人かこちらに走ってくるのが見えた。
「隊長....一体何がッ!?」
駆け付けた兵たちは
倒れる血塗れの兵士を抱えるライルの姿に、当然のこえながら事態の読めなくて動揺する。
端から見れば、何が起こったのかと疑うような状況。
動揺するのも、無理はなかった。
「....話は後だ。
この者を、早く医務室へ!」
「はっ!」