mirage of story
 
 
 
 
 
 
 
戸惑った様子の兵だったが、事態の深刻さを悟ったか
ライルの言葉に、短く返事をしてライルから傷ついたその兵の身体を預かる。



そしてそのまま二、三人の兵と共に傷付いた彼を一刻も早く治療すべく医務室へと駆けていった。






「......」



遠ざかる兵たちの背を見送るライル。
そして彼等の姿が廊下の先に見えなくなるのを確認して、再びロアルの元へと向き直った。






「......」



「.......ロアル様?」




黙り込むロアル。
そのロアルに、様子を伺うようにライルは控えめに話し掛ける。

......それから数秒間、また再び何とも言えない空気の中で沈黙が支配する。




ほんの数秒のはずの、その時間。
なのに、どうしてこんなにも長く感じられるのだろう?


きっとその理由は、この異様な程に静まり返る空間と
ロアルの醸し出す重量感のある漆黒を纏った威圧的な姿なのだろう、そうライルは思った。







「―――――ライル」



重々しい空気を肌に目一杯感じながら、答えを待っていたライルに
沈黙を破ったロアルの声が響く。

その声は、空気を震わせてその空気はライルの身体をも震わせる。









「......やらねばならぬことが増えた。

―――再度軍の準備をしろ。各地域に配属されている隊長格の者.....それと、腕に自信のある者を城へと呼び戻す手配をせよ。
......全軍を、城へと引き戻させろ」





「――――ッ!
一体....一体、何が起きたんですか!?

全軍を呼び戻すなんて......一体その紙に何が書いてあったと――――」








 
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