mirage of story
「......この紙は、この紙に描かれたこの文様が意味するのは――――我等に対する宣戦布告。
我等の正義を阻もうとする者が....現れた」
「宣戦布告....ッ!
それは、人間たちがこの城に攻めてくるということですか!?」
「―――――いや....敵は人間ではない。人間などより、ずっと厄介なもの.......」
「人間じゃない....?
それじゃあ、一体―――――」
ロアルの手の中で、ひらりと揺らめく小さな紙切れ。
その紙切れに蒼と漆黒、二つの光を帯びた視線が注がれる。
「魔族だ」
ライルの動揺とは対照的に不気味な程に落ち着き払った声で、ロアルは短く答えた。
その言葉はあまりに短く、そしてあまりに明確だった。
「――――ッ!」
その短い言葉の与えた大きすぎる衝撃に、ライルは言葉を詰まらせた。
何も、言葉が出てこなかった。
「......早急に軍の手配をしろ。全ての指揮は―――ライル、お前に任せる。
行け」
言葉が出てこないライルに、ロアルは追い討ちを掛けるようにそう言い放った。
ライルは、衝撃とあまりにはっきり言い放たれたその言葉に
ただただ頷くしか出来ずに、未だに頭の整理が出来ぬままに深く一礼し
言われるがまま、そのまま軍を手配すべく無言のままにロアルの居る部屋を後にした。
部屋の中にはただ一人、ロアルだけが残された。