mirage of story
男の口調は、相も変わらずに感情の読めない。
だが二度目の問いということもあり、少しだけ答えを急かすようなそんな語尾だった。
「カイム......」
相手の言葉。
この男の言っている"救世主"というのは、自分達のことだ。
そのことに戸惑いを隠せないシエラは、後ろでまだ何も答えないカイムに声を掛ける。
するとカイムは相手へと注意を怠らないまま、シエラへと意識を向けて"大丈夫"と小さな声で言って頷いた。
「.......救世主だなんて、そんな大それた呼び方をされる覚えはありません。
ですが話を聞くと、貴方の言うそのカイムとシエラという救世主は、どうやら俺達のことのようです。
ランディスの街が襲われた時、あの街に居たのは間違いなく.....俺達。
だけどそれがどうして、貴方が俺達の後をつけていた理由になるんですか?」
「.......」
「貴方はさっき在る方からの命により来たと言いました。貴方達の元に俺達を引き入れるために来たと。
それは一体誰の命です?
それに貴方達の組織というのは一体.....そもそも貴方達は人間側の者か魔族側の者か、どちらなんですか?」
相手の答えを待たずに、カイムは言葉を続ける。
「他にもまだ貴方に聞かないといけないことがある。
貴方は俺達のことを知っているようですが、俺達は貴方が何者か知らない。
.......フードを取って顔を見せ、そして名乗るのが礼儀だと思いますけどね。俺は」