mirage of story
"とても幸せだった。
だがそれと同じに、私は生まれたばかりのその娘に触れた瞬間に、彼女がこれから辿る壮絶な運命を悟ってしまったのだ。
あぁ。
出来ることならば、娘には危険な運命を辿って欲しくはない。
私はこの子の父親なのだ。
そう思うのは当然。
.....だが私の悟ったこの子の辿る運命は、どうあっても避けられぬことであることを私は認めるしかなかった"
彼が、この王が聡明であると云われた理由。
それは彼が、この世の先を見通す力に長けていたから。
特別な能力とか、そういったものではない。
それはただ彼の並外れた洞察力と、それに伴う行動力が為した結果だった。
そう。
そしてこの時も、生まれたばかりの最愛の娘に彼はこの世の先を見てしまった。
娘が持って生まれた運命。
彼は娘に触れたその瞬間に、底知れぬ程のとてつもない魔力を彼女から感じてしまった。
それは魔族の姫たる娘にとって、幸運なことのように思えた。
実際に壮大な力を持って生まれたことは、幸運なことでもある。
だが全てを悟った彼にとっては、娘のその運命は過酷で暗いものにしか見えなかった。