mirage of story







そうだ。

これを記した聡明な王。
娘を思う、優しいその王。


それは現在の魔族の王、つまりロアルよりも一代前。
今は亡きルシアスの父だった。










"我が娘、ルシアスよ。

君が生まれたことは、世界に大きな光をもたらした。


これから先、君の運命の中でどんな困難があれど、生きていれば必ず報われる時が来る。
君が願い続ければ、それはいつか絶対に叶う。



忘れないで欲しい。
私は....父は君を愛している。

何があろうと君は君の信じる道を進みなさい。
そんな君の信じた道を、この父も信じよう"








彼の娘が、ルシアスが生まれた日に綴られた言葉。




生まれたばかりの娘に、彼は一体何を見たのか。


誰も知り得ぬはずの未来を、ルシアスが戦乱で命を落とすという運命を見ていたのか?
娘のそんな運命を、娘が生まれたその日に予見していたのか?








いづれにせよ、彼によって綴られたこのルシアスの運命に対する危惧が現実となってしまうのは、まだこの時から数年先のこと。







 
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