mirage of story
〜3〜






ルシアス誕生から十二年の歳月が経った。


あのルシアスが生まれた日に書かれた新世界白書のページから言うと、その間三ページ。

平穏無事な時間が流れ特に目立ったことはなく、十二年という歳月は文書の上ではたったそれだけのページで集約されていた。











"我が娘ルシアスが先日、十二歳の誕生日を迎えた。

誕生祭には大勢の者が来て娘を祝ってくれた。
ルシアスは、とても幸せそうだった。



姫としての自覚はまだ足りんが、ルシアスには国を束ねるだけの素質がある。優しさがある。

だが一人では何もすることは出来ない。娘には「支え」となるものが必要なのだ。



だから、まだあれをルシアスに渡すのは早い。


.....そう思っていたのだが、娘はもう私の知らぬ間に自分の「支え」となる者を見付けていたらしい。

娘の成長というのは父として嬉しいものだが、少しだけ淋しさもある。



だが娘が見付けたその「支え」は、何事にも揺るがぬものであると私は彼の強い瞳を見て確信した。

そしてその確信が私に、その時が来たのだと悟らせた"







十二年。
文字にして三ページ。

そんな時を経て、またこの新世界白書の黄ばみかけた白紙のページの上に新たな歴史が刻まれる。



著したのは、ルシアスの父。
記されたのは、ルシアスの十二度目の誕生祭が盛大に行われたその数日後のことだった。






 
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