mirage of story
"彼の蒼い瞳に、私は強い決意と覚悟を見た。
この子はまだ幼い。
それ故に未熟でもあり、まだ経験も知識も足りない。
だがそれでも、この子になら娘を託すことが出来る。
私はそう確信し、ついにその行動を起こした"
"我が祖先が代々王家に伝えし二つの指輪。竜の宿る竜刻の指輪。
それをルシアスに......そして彼に。
この国の、そしてこの世界の未来を若い彼等に託す時が来た。
本来指輪は王家にのみ伝える掟。
その上に指輪の竜に認められる程の相応の魔力がなければ、指輪の契約者にはなれず、指輪を持つことは出来ない。
指輪の契約者となり得る資格。
恐らく我が娘、ルシアスにはそれがある。
......だが彼は王家の血を引いていない。それに指輪に伴う程の力が彼にあり得るかどうか、私には不安であった。
彼を試しその資格が彼にあるのなら、指輪を.....今、私が契約者であるこの炎竜の指輪を彼に譲ろう。
だからその時は、彼に力を貸してやってくれ。
そう考え提案した私に、我が契約者である炎竜は静かに私を見据え、頑固な私の態度に半ば諦めたように首を縦に振った。"
ルシアスの父。
彼は賢明な王であった。
それに彼もまた、指輪の契約者であった。
だが、彼が指輪と契約していたということは、誰も知らない。
契約者となっても彼はその力を誇示せず、ひた隠していたからだ。