mirage of story






指輪の力は強大。

強大な力は人に幸福を与えるが、それと同時にその幸福に伴う程の、いやそれ以上の不幸を与える。




力は使い用によっては、人を生かしもする。殺しもする。
世界を平和にする。また破滅へと導く。



たとえ力を使わなくても、その力を持っているというだけで、力を持っていない者にとっては脅威の存在と化す。

人というものは自分にないものを恐れるものだ。
故にその恐怖から逃れようと、自分達と同じ境遇の者達と力を合わせ、その脅威の存在を打ち破ろうとする。







そのことを、彼は知っていた。

だから彼は指輪のことを公言しなかったし、指輪を受け継がせることも内密に行った。
それが、平和を崩さぬ一番のことだと思ったから。












"私の予見した通り、ルシアスは竜に認められ幾千年の時の間、王家に契約者となる者が現れずにただ保管されていた竜刻の指輪の一つ.....水竜の指輪の契約者となった。



そしてその後、彼が契約者となる資格かある者かを試す時が来た。

試すといっても、判断を下すのは私ではなく炎竜。
炎竜は彼と対峙し、彼の素質を燃えるような紅の瞳に映した。



私はその炎竜の審判が下されるまでの間、そのなりゆきをただ祈った。



ルシアスには彼が必要だった。彼にもルシアスが必要だった。
世界にも、彼等が必要だった。

もしこれで彼が契約者としての資格が無いと炎竜が判断を下せば、彼等の未来......そして世界の未来の光が無くなる。
私は、そうとさえ思っていた"









 
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