mirage of story
そうしてもうすぐ、彼の記した歴史もメリエルの司書官の手によって編纂され、世界中にその歴史が新たに刻まれた新世界白書が出回る。
そして彼の記した新たな歴史が民の記憶に刻まれる。
.......そのはずだった。
だがそれは、もう少し先のこととなるだろう。
もしかしたら、彼の記した歴史が複製本として世界に出回ることはもう無いかもしれない。
それは、何故か。
理由は簡単である。
世界にとって、人にとっての大事な歴史の遺産である新世界白書。その原本。
メリエルの中央図書館で編纂される時を待つ、その本。
それは、今この時にはもう在るはずの場所――――メリエルに無いのだから。