mirage of story

動き出す世界

〜1〜　









「........ふぅ、このページで最後みてぇだな」




パラパラパラッ。

指先で分厚い本のページを弄ぶようになぞりながら、ずっと下を向いていて凝った身体をグッと伸ばして解す。





グッ伸びをして、ふと見上げた視線の先には青と黒が混ざった闇に散りばめられた金色の粒子。
そしてニカッと頬笑むような細いブーメランのような輝き。

それが地平線の彼方から侵食するように広がる白い闇に飲み込まれるように、一体化して溶け込んでいる。



壮大なパノラマが、見上げる紅の瞳の中に繰り広げられる。










「おぉぉ.....寒」




見上げる先にあるのは空。
もうすぐ夜明けを迎えようとしている、静寂なる空。


周りに遮るものは何もなく、分厚い本を片手に地面を腰を下ろしそれを見上げる男ジェイドは吹き抜ける冷たい外気にブルッと身を震わせた。



寒さを感じて、ジェイドは辺りを見回す。

そして近くに置いてあった一枚の毛布を見つけ、それを自分のもとへと手繰り寄せてその中に頭から包まった。







「ここら辺は寒くて嫌になるねぇ、まったく」




そんな愚痴を溢しながら、ジェイドは再び片手に持つ一冊の分厚い本へと視線を落とした。

毛布の中に完全に包まった状態で、彼は明かりを求めて手探りで毛布の外に置いた小さなランプを中に引き寄せる。
暗いその中を、ランプの暖色系の光が照らす。