mirage of story
メリエルから続く長い旅路。
行き先を知っているのはロキだけだった。
シエラ達を自分の属する組織に引き入れることが目的とはいえ、まだ味方となる可能性が完全ではない者に目的地―――つまり組織の根拠地となる場所を易々と教えるわけにはいかないのだろう。
それにロキにとっては想定外だったジェイドの存在もあるのだから、尚更だ。
だがもう旅を始め歩き続けて幾日。
シエラにもカイムにも、恐らくはジェイドにももう自分達の居場所も定かではなくなっていた。
だからもう目的地までの道のりや距離を隠す必要性は無いように思えた。
「.............我々が目的とする地までは、もうそれほど遠くはない。
この先を暫く進めば古くからある森がある。そこで給水も出来るだろう。
その森は太古の昔から神聖な地とされていて不思議な力で閉ざされている。そこを抜けるのはそれ相応な術を知っている者でなければ叶わない。故に今までよりは幾分か落ち着いた休息が取れるはず。
我々の根拠地とする場所はその森を抜けたすぐ先にある。
森まで辿り着けば、今に増して急ぐ必要はない」
ジェイドの言葉からロキも察したのだろう。
旅の中、初めてロキが目的地に関する具体的な情報を口にした。
あと少しで辿り着く。
ロキの言葉に今まで感じられなかった実感が湧いてきた気がして、シエラを始めカイムとジェイドの心が軽くなる。
そんな実感を胸に、三人は果てなく続く広大な大地の向こうを見つめた。
「その森には、あとどれくらいで着けるんだい?」
「今までのペースで歩いたとしても、今日の夕刻には」
大地を見つめ訊ねるジェイドに、ロキは今度は無視をせずに素直に答える。
スッ。
そして三人が見つめる視線の先、僅かに視線の端に見える土の茶色に佇む緑を指さした。
「......あの辺りに見える木々が群生している所が、森への入り口だ」
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