mirage of story
擦れ違いの果て
〜1〜











「いい加減遅ぇ。
そう思わねぇか、ロキちゃん。

もうすっかり夜になっちまったじゃねぇか」






シエラが水汲みに出て、そのシエラを探しにカイムが出て、それから一悶着があり更に時間が経った。

陽は沈み切り、空は完全なる夜の顔。
空気も冷たさを纏った夜のものへと、その装いを変えていた。





そんな中、疲れたといって布を被り寝ていた――――というより寝たふりをしていたジェイドがとうとう溜まりかねたように飛び起きる。














「................彼等が帰ってくるまで寝ているのではなかったのか?」



いきなり飛び起きそう言うジェイドに、ロキは相も変わらず冷静に視線を彼の方にも向けないで答える。










「いやー、あんまり遅いんで心配でおちおち寝ちゃ居られねぇさ。

ほら、俺ってば非常に他人思いないい人だから?」




「...............。

確かに、少し帰りが遅すぎる。
まさかとは思うが、二人共々迷ったということか。
あれほど単純な道を」




「だからね、ロキちゃん。
俺の発言を華麗に無かったことにするのは止めてくれねぇかい?

結構繊細なわけよ、皆さんが思うより俺の心ってのは」






「捜しに行く程でも無いが、これ以上遅くなるのは問題か.....。

明朝の出発に支障を来されては困る」






この空間の中にはこの二人しかいないはずなのに、どうあっても会話が噛み合わないのはこの二人の宿命か。


一方的なジェイドの問い掛け。
対してロキは独り言のよう。

ロキがジェイドの声が聞こえていなくてこんな反応をしているとは思えないので、これは故意。








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