mirage of story










そんな夜の穏やかさと相対するような不穏なジェイドの呟き。
反応はしないが、ロキも同じことを思っているようで瞳を伏せたまま何も言わなかった。






嵐の前の静けさ。

このご時世、いつ何時世界を巻き込んでの大きな嵐―――世界を巻き込んでの戦乱が起こってもおかしくない。
穏やかな時がこの今の世界で、長続きなど出来るはずはない。




それを分かっているからこそ、この穏やかさがほんの一瞬で無くなってしまうのではないかと、こんなに不安になる。

必死にこの時を守ろうとしても、世界の流れを前に人は為す術がないのだから。





















ガサガサ――――。








「.......帰ってきたようだな」



静かで穏やかな夜に不安を覚える空間に、遠くから聞こえる草を掻き分ける音がした。

その音にロキは瞳を伏せたまま、その方向に視線わ向けることもしないで言った。
ジェイドもそのロキの呟きに、気分を変えるように一つ息を吸い込むと顔にいつもの軽い笑みを浮かべる。














ガサガサ。
ガサッ―――。






「―――――。

遅くなりました......ジェイドさん。ロキさん」



草の音。
それは近付き近付き、そして止まってそんな声を発す。










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