mirage of story
それは紛れもなく、随分前にシエラを捜しに行くと出て行ったきりだったカイムの声。
ジェイドとロキはその声を聞き、同時に視線を向ける。
視線を向けた先。
そこにはその声の主カイムの姿と、その彼の背に背負われたシエラの姿。
「ど、どうしたんだ。嬢ちゃんは」
「大丈夫です。
眠っているだけです。心配ありません」
「......寝てる?」
「はい」
「そうかー。寝たのかー。
......ん、寝た!?」
えっと、確かジェイドの中の記憶が正しければシエラは水を汲みに出掛けたはず。
バケツ片手に森の中を歩き、そう遠くはない泉へ一杯の水を汲みに。
確か、そのはずだったはずなのだけれど。
「............一体何がどうなって、嬢ちゃんは寝ちまったんだ?
水汲みに行って」
当然、沸く疑問。
「まぁ、色々と」
「色々ってなぁ......」
その疑問にカイムはざっくりとした答えを返す。
それから片手に持っていたシエラが持って行ったはずのバケツを地面へと置いた。
バケツの中にはちゃんと水が入っていて、置いた拍子に水面が揺れた。
「よいしょっと」
バケツを置いて少し崩れてしまった体勢。
背負っているシエラが背中からずり落ちそうになってしまって、カイムは咄嗟に背負い直してまたジェイドを見る。
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