mirage of story











「何か.....あったみてぇだな」


カイムには聞こえないような声で、ジェイドがぼそりと呟く。










「詮索するつもりなら止めておくんだな。
趣味が悪い」



「詮索なんぞするつもりはねぇさ。

他人の内の奥底まで探りたいほど、他人に興味を持てる奴じゃあないんでね。俺は」




対照的な二人の呟きくらいに小さな会話が続く。

ロキは何の感情も抱いていないように冷静にカイムを見て、ジェイドは何も考えていないようなヘラッとした笑みでカイムを見た。




送られる視線。
二人の視線が重なり注がれていることにも全く気が付かず、カイムは眠るシエラをただ何処か心配そうに見ている。

そして数秒。
何かを考えるようにしてフッと瞳を伏せ、それからゆっくりと開いた。











スッ。
カイムが立ち上がる気配がして、ジェイドとロキは送っていた視線を各々の場所へと戻す。

それに気が付いていないカイムは立ち上がり、何事も無かったように振り返りシエラを残してテントの中から出てくる。















「....ジェイドさん。....ロキさん。

本当に遅くなってしまってすみませんでした。
夕飯作るんでしたよね、俺お詫びに沢山手伝います!」




「そうだな、お前と嬢ちゃんのおかげで俺達は腹ぺこだ。

ってなわけで、今日の夕飯の準備は全部カイムに任せるとしよう!」




「ぜ、全部ですか!?
.......が、頑張ります」




ジェイドの言葉にカイムは苦い顔をするが、遅れたのは自分のせいであるので反論も出来ない。

うっ、と言葉を詰まらせてから渋々とカイムは頷いた。









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