mirage of story










次々と止め処なく、私の知らない私の記憶が駆けめぐる。



.........そのどれもが、私はとてもとても幸せだった。

知らない場所。知らない人。
なのに、凄く幸せで。







頭一杯の矛盾。

だけど本能はその矛盾を納得していて、むしろ求める。
知らないはずなのに、それが無性に懐かしくて手を伸ばしている。













頭が痛い。
もの凄く痛い。


痛む頭には、また次の知らない記憶が流れてくる。






知らない場所。
小さくて綺麗な花が一杯に咲いていた。

私は一人そこで花を摘んでいて、凄く幸せで少し寂しい。


今日もまた、一人きり。
溜め息が出てきそうで、でもそれを必死に堪えていた。










そこに現れる、一筋の青。蒼。

全て知らないはずなのに、この青は知っている気がした。





私が振り返る。
振り返った前には、一人の小さな少年。

私は驚いて後ろに仰け反り尻餅をつく。
少年はそんな私に手を差し伸べてくれて、私はその手を取る。










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