mirage of story
津波。洪水。
そんな勢いにも勝る程の勢いで、巡る記憶。
迸る、感情。
長い間忘れてしまっていた大事なものが、私の中に還ってくる。
私が、還ってくる。
(.......私は.....)
満たされていくその感覚に涙が出た。
今まで知らなかった私という存在とその意味。
それを知った私は何かを取り戻し得たと同時に、何かを失った。
(私..........)
言葉が、出てこなかった。
得たものもさることながら、新たに失ったものも大きかった。
大きすぎた。
失っていたものが戻ってきた。
それは忘れていた記憶であり、忘れたままでいたかった真実。
自分の知らない自分が戻ってきたのに。
これで本当の自分になれたのに。
なのにどうして、私は―――。
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