mirage of story
意識の遠くでパチパチと炎が燃え弾ける音が聞こえ始めた。
遠くの方で人の話す声が、聞き慣れた仲間の声が聞こえ始めた。
それを聞く私は、閉じた瞳を無理矢理にこじ開ける。
「ん.....んん....」
目を開けば、寝起きには優しい薄暗い空間。
暗い中、上に広がる白い布の天井の幕。
横から見えるのは布越しの炎の暖かい色味。
そう、此処はテントの中だと私の脳内は把握する。
「おかしいな......。
私、確か泉に居たはずなのに」
寝転がり上を見上げたまま、ぼんやりとした頭で思う。
森の中を歩いて歩いて、水を汲みに行った泉。
そこで起こった普通では到底理解できないような非現実的すぎる不思議な出来事。
綺麗な青い水竜。
水竜は私に語り掛け、私に問う。
水竜が語るのは私の存在。忘れ去られた記憶。
見せるのは、私の知らない本当の私。
私は失った記憶が戻ることを心から望んでいたはずなのに、取り戻し得たのは絶望感。
そして私は今までシエラとして生きてきた私を、失った。
(.........っ)
あぁ、心が痛い。
どうしようもなく、辛い。
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