mirage of story
歳は明らかにこの場に居る殆どの者よりも遥かに若いだろうに、それを一切感じさせないその気迫。
誰一人そのことに文句を言う者もなしに、彼より遥かに歳を重ねたはずの兵達が彼に従い動く。
指示を待ち、誰もが皆彼に意識を向ける。
「隊長!隊長!
弓部隊、指示通り全て配置完了しました!」
そんな緊張しきった空気の中で、一人の少年がライルの元へと駆けてくる。
その少年、つまりキトラの手には弓。
その背には沢山の矢の束。
キトラは弓を強く手に握り締め、ライルの前に立ち言う。
「あぁ。
じゃあ、お前も自分の配置について指示を待ってろ。キトラ」
「はいっ!」
ライルはそんなキトラを一瞥し、真顔のままに言った。
そしてその視線をそのままキトラの向こう。
兵や兵器が散りばめられた大地の遥か先、遠くに見える地平線へと移す。
「...........もうすぐこの荒野と平原、その向こうに姿を現すはずだ。
愚かな人間達と俺達魔族を裏切った奴等の群が」
キトラも同じものを見た。
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