mirage of story










生きて会おうなんて、大袈裟に聞こえるかもしれない。


だけど命懸けの戦乱。
何がどう転ぶか分からない。
いい方向にも。悪い方向にも。






言える時に言っておかねばならない。

まだ大丈夫だ。
そんな過信は、後に大きな後悔を呼ぶことになるのだから。




五年前、ルシアスと生き別れたあの時をライルは思い出す。
別れも言えずいつの間にか大切な人が消えていってしまう。

それが戦争であるのだと、ライルは知っていた。















「............隊長も、どうかご無事で」


キトラはライルの想いを察して、強く頷き答えた。





トンッ。
兵達が忙しなく行き交う中、キトラは踵を返す。

その後ろ姿は、何だかいつもの彼よりもずっと大人びて見えた。



























―――――.....。

ッ。














「................来た」





背を向け駆けていったキトラを見送った。

そしてそれよりも遥かなの地平線の向こうに、ライルの青い瞳は黒い影を見た。










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