mirage of story
〜4〜











静かで穏やかな場所。
武器を取り殺し合う修羅場。

それは同じ世界にこうして存在していて、互いはその存在を知らない。





ただそれらを隔てるのは、ただ一枚の薄っぺらい膜だけ。

それらは常に隣り合わせで、何かほんの小さなことをきっかけにその膜は呆気なく破れ対なる二つの世界は顔を合わせることになる。



二つが顔を合わせればどちらかの世界がもう一つの世界に取り込まれることになるのだけれど、その大抵取り込まれてしまうのは穏やかな世界の平和だ。
























「..........此処の夜はこんなに静かな夜なんですね」





そして今、まだ同じ世界で起こっている修羅場を知らずに穏やかな時を過ごす者達は、そう言い空を見上げる。











「逆に静かすぎるのも、怖いもんだけどな」


「そうですか?」




「まぁこの静かな夜はいいんだが......その後がなぁ。

こんなのが続くなら大歓迎だが、大概続かねぇからなぁ」






滴る緑の一角で寒い夜に温を添える焚き火を囲み、食事が入っていただろう空の皿を足元に。
優雅に食後の茶まで啜りながら、穏やかな時であるがこそ出来るような会話が続く。




そこにあるのは火を囲み隣り合って座る二つの影――――カイムとジェイド。
一つ離れた場所にぽつんとある影のロキ。

そして端に張られたテントの中に眠る影のシエラの、そんな四つの人影。


ちなみに会話をするのは、そのうちのカイムとジェイドである。








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