mirage of story













熱い茶をゴクリと飲むカイム。

その隣でズズッとカップに残った茶を飲み干す音。
それからフウッと一息つく声がして、自分の座っているその傍らにカップを置いた。













「そういやぁ.......まだ嬢ちゃん起きて来ねぇな」


「―――え?
あ.....あ、はい」





そういえば。
そんな前置きを置いて、思い出したように話題を変えた。

ずっと頭の中にはあったのだろうが、フゥッと落ち着いた所でそれが前に出てきたのだろう。
そう話題を切り替えられカイムは一瞬戸惑うが、すぐに対応して答える。




答えた瞬間。
カイムの中でもずっと頭の中にはあったけれど、抑え込んでいた彼女の存在が一気に濃くなる。

持っていたカップの茶は動揺したように僅かにグラリと揺れ、カイムはそのカップをまた握り直す。
そして一瞬だけ躊躇い間を置いて、それからゆっくりとテントの中で眠る彼女のことを見た。
















「.........大丈夫です。
きっとそのうちに、目を覚ましますよ」



彼女を、シエラを優しく見つめてカイムが答えた。









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