mirage of story












「へぇ.......珍しいこともあるもんだ。
あんだけ心配性なお前が、そんなに冷静だなんて。

いつもだったら、聞いてるこっちの耳が痛くなるくらい大騒ぎするってのになぁ?」






「........。

あんまり心配するのは、もう止めたんです。
俺がシエラのことを心配に思っていても、所詮それだけで.....俺は何もシエラにしてあげられないですから。

だから、無意味に期待を持たせてしまうような嘆いたりするばっかりの肩書きだけの心配は、もうしません」







意地悪を言うように笑いながら言うジェイド。


いつもならカイムは困ったような顔をして焦ったりする。
ジェイドの言う意地悪なことは決して的を外れてはいなくて、遠回しにでも実は率直に的を射たことを聞いてくるので、人を欺いたりするのが得意ではないカイムは上手く対応が出来なかった。






だが、今回は違う。

カイムはただただ落ち着いたままシエラに視線を置き、不気味な程に穏やかな声で答える。
その声は何か全てを悟ったような、そんな声にも聞こえた。























「そうか.......」



ジェイドはいつものような反応を期待していたのか、拍子抜けして真顔に戻って短くそう呟いた。



シエラを見つめるカイム。
ジェイドはそう呟いてから暫くそんな彼を見る。

そんなジェイドの視線の傍らでは、尚も焚き火が勢いよく燃えていて、その光がカイムの深紅の髪を一層に紅くする。
その紅が更にジェイドの鮮やかな紅い瞳に映って、寒々しい夜の色に温かい色を添えていた。










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