mirage of story











その口調を裏切らず、ただそれだけ言ってこれ以上は何も言わなかった。




無関心すぎる。
そうとも思えるが、これがジェイドなりのカイムへの配慮。


相手の深くに入りすぎない所。
いや、入ろうとしない所。

これが彼の世渡りが上手い所以であって、またこれが他人と自分を一線を画して遠ざけ安定した距離を保つ彼の生き方だ。








..........。

短い返事をジェイドが返したきり、カイムもそれ以上話さなくて暫く沈黙が走った。



カイムは、やはりまだシエラへと視線を置いていた。
ジェイドは視線をそんなカイムから逸らし、燃える焚き火の炎を見ていた。

気まずくはなかった。
だが耳には自然のノイズ以外、何も聞こえないほど静寂だった。
























「..................俺はこれから先、シエラを傷付けてしまうかもしれません。

それもとても深く。残酷に」





ノイズだけの時が流れた。

そんな中、ふとカイムが洩れるような微かな呟き。
それは誰かに聞かせるために出す声ではなくて、自分に語りかけるそんな声。




でもそれはジェイドの言う"何か"であり、その答え。

"何か"の内容ではなくて、"何か"を経て得た漠然とした想い。結果。







静寂の中に溶け込むその想いの声に、ジェイドは何も言わないまま耳を傾ける。
視線さえもカイムの方へは向けず、ただ聞いていた。












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