mirage of story
「............。
だが君の言葉に対しての意見としては、私もこの男と同じだ。
非常に不本意だが」
「え?」
暫くの間、ジェイドへ向け殺気のような物騒なオーラを送っていたロキ。
だが少しして半ば諦めたようにスッとその殺気を消すと、ジェイドからカイムへと意識を移し抑揚のない声で言う。
いきなりのその言葉に、無防備だったカイムの意識はビクッとして素っ頓狂な声を上げた。
「..............君は自分が彼女を不幸にしてしまうと言っていたが、端から見れば君と居る時の彼女はどんな時よりも幸せそうだ。
少なくとも、今は。
君に何があってそう思ったのかは知らない。
これからのことは誰にも分からない。
だが何があったとしても、君の言う君と彼女の仲間の絆というのは、そう簡単に断ち切れてしまうものではないだろう」
「ロキさん―――」
正直、意外に思えた。
今までロキはいつもただ傍観する側で、何があろうと自ら会話に入るようなことはしなかった。
ましてや、こちらから求めない限りは自分とは関わりのないことに対して意見を言うなど、考えられなかった。
なのに、どうだろう。
今のロキは、カイムに自ら口を開いている。
しかもそれはカイムを励ますような言葉にも取れ、他人には一切の興味も持たないと思っていたロキがそんな言葉を言ってくれるなどカイムは思いもしなかった。
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