mirage of story











それは、どんな契約なのか。

その人が恐る恐るそれを尋ねようと口を開く。
だがその前に、闇の声が続く。



















"我にお前を捧げるがいい。
命を捧げるわけでない。お前のその身をだ。"




身を、捧げる?
この自分の身を捧げる?

言葉の意味をいまいち理解することが出来なくて、困惑した末に何も言えずに闇を見た。
















"..............我は古に受けた忌々しき封印の鎖に縛られ、この世界の本当の地の底で身動きを取ることが出来ぬ。
我が力も世界へと分散され、封印の鎖を解くことも叶わぬ。

――――力さえ戻れば、封印を解き再び世界へ降り立つことなど、他愛もないことだというのに!"




闇の声がおぞましい狂気を纏い荒げられた。

それはまるで地を這い揺るがす轟音にもよく似ていて、反射的に身体が強張る。
何だか蛇に睨まれた兎の気持ちがよく分かった。



















"どれもこれもあの忌々しい竜共の愚かな所業故。
おかげで我の存在はこの世界から忘れ去られ、世界は哀れな弱者であったはずの人の手に堕ちて下らぬ世界になり果てた。



赦されざる、この腐りきった世界の現状。その世界で何も知らずにのうのうと生きる愚かな人共。

..............全てを正したいのだよ、この世界を本来あるべき姿に戻すのだ。
そのため我はお前のその身を使い、世界に分散された我が力の全てを集め地に縛られし我が身をこの腐りきった世界に復活を遂げさせる"









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