社内溺甘コンプレックス ～俺様社長に拾われました～

「梨香……？」

「朝っぱらからアラームうるせー！　さっさと起きるか止めるかしてよ！」

　寝起きが悪い妹は、目をほとんど開けていない状態の不機嫌そうな顔で私のスマホを突き出した。手の中でアラームを鳴らしながらブルブル震えているスマホは今にも妹のバカ力に亡き者にされそうで慌てて受け取る。

「ごめん、今何時……て、うわっ、もうこんな時間！」

　慌てて飛び起き、妹と並んで敷いてあった布団を畳む。

　私がリビングに続く引き戸を静かにスライドさせると、妹は眉間にしわをよせたまま自分の布団にもぐりこんだ。

　まずいまずい。

　大慌てで顔を洗い、いつもの三倍の速さで化粧を済ませ、肩にあたって外側に跳ねた髪を強引に後ろでひとつにまとめた。

　会社に九時に着くためには、通勤ラッシュの遅延を見越して自宅を六時には出ないと間に合わない。なるべく午前零時前には寝るようにしているけれど、ここ最近帰宅自体が零時を回ることが増えていた。