社内溺甘コンプレックス ~俺様社長に拾われました~

 割り振られた仕事が終わらないのだ。

 普通に就業時間内に終わるような仕事量のはずなのに、パソコン操作がおぼつかない私の作業スピードだと、どうしても時間オーバーになってしまう。

 内藤さんは帰っていいと言ってくれるけれど、私ははやく仕事に慣れたかった。だから会社に残って仕事をしているのだ。

「行ってきます」

 誰もいない居間に小さく声をかけ、マンションの階段を駆け下りた。いつもより一本遅いバスに乗り込み、最寄り駅から電車に乗り換える。

 運が悪いことにこの日はいきなり遅延していた。

 途中までは余裕のあった車内が、大きな駅に着くと途端に満員状態になる。いつも座れないけれどスマホを眺めるくらいの余裕はあるのに、今は前後左右ぴったりくっつく形になり身動きが取れない。

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