社内溺甘コンプレックス ~俺様社長に拾われました~
整髪料をたっぷりつけたおじさんの髪が頬にあたりそうになって懸命に顔を離す。ふと隣を見ると、小柄なOL風の女性がおじさんの背中に押しつぶされそうになっていた。
私はどうにか体を彼女の方に向け、埋もれかけている空間にごくわずかな隙間を作った。少しは楽になったのか、彼女はほっとしたように私を見上げると、小さく頭を下げてから困ったように微笑んだ。
お互い大変ですねというように、私も笑みを返す。
背があればあったでおじさんの顔を間近に見なきゃいけない羽目になるけれど、小柄な人は圧迫されて苦しい思いをしなきゃいけないのだ。
人がたくさん降りる駅まであと一時間、この姿勢を保たなければならない。そのあとはわずかに車両が空くけれど、座れるかどうかは運次第だ。
仕事を頑張りたいのに、毎日の通勤で、すでに精神が削られていっている気がした。