社内溺甘コンプレックス ~俺様社長に拾われました~
入社して一か月が経つといろんなことが見えてくる。
システム部の人たちはほとんど二階の部屋にこもりっぱなしで、毒舌メガネことディレクターの森さんしか部屋の外をうろつかないこととか、淡々としていてクールだと思っていた内藤さんが実はとても面倒見のいい人だったこととか。
「ひとり暮らしすればいいのに」
三十歳だという森さんはすでに結婚していて子どもがひとりいるらしい。
「ひとり暮らしってどれくらい費用かかりますかね……」
最初のお給料はもらったけれど、月々の返済を考えると結局貯金に回せる額は雀の涙だ。それでも眼科とサロンのお金を最優先に確保して社長に返そうと思ったのに、「必要経費だ」と言われて受け取ってもらえなかった。
「僕のとこは奥さんが全部管理してるからなぁ。名取くんに聞いてみれば? 彼、たしか大学のときに地方から出てきて、ずっとひとり暮らししてたはず」