社内溺甘コンプレックス ～俺様社長に拾われました～

「えっと……ひとり暮らしって、だいたい月にどれくらいの費用がかかるのかなと思いまして」

「なに、前原ちゃん引っ越すの？」

「いやあ、いつかは引っ越したいですけどね」

　預金残高を思い浮かべながら自虐っぽく言うと、名取さんは「ふーむ」と腕を組んだ。

「費用っていっても家賃によるしなぁ。あと光熱費と食費と、交際費と交際費と交際費と……」

「どんだけ交際してんの名取くん」

　森さんが突っ込むと、整った顔をくしゃっと崩して名取さんは楽しそうに笑う。

「まあ、会社から一時間圏内と考えてもセキュリティ面を考慮すると家賃だけで相当いっちゃうよねー」

「そう、ですよねぇ」

　女のひとり暮らしだから、二階以上だとか、オートロックだとか、最低限のセキュリティは確保したい。でもそんなのは夢のまた夢だろうか。