社内溺甘コンプレックス ~俺様社長に拾われました~
「ここでは商品の管理と展示が主だが、必要があれば各ブランドのアイテムを撮影してサイトに載せる。カメラ、使ったことあるか?」
カウンターに置かれた機材の中から、片手には収まりきらないようなゴツいカメラを渡され慌てて首を振る。社長は表情を変えないまま、隣で静かに微笑んでいる飯田さんに目を移した。
「簡単に教えてやってくれ」
「はい。それじゃ前原さん、このバッグを撮影してみましょうか」
私の前任だった新庄さんはオールラウンダーだった。
創業時からスティリスにいて、社長とともに営業からサイト制作から商品撮影からなんでもやったと、美しく笑っていた姿を思い出す。
そんな彼女の後をそのまま任されるわけではない。きっと社長だって、私が新庄さんみたいになれるとは思っていないだろう。それでも仕事の流れを理解するために、彼は私にあらゆることをやらせてくれる。