社内溺甘コンプレックス ~俺様社長に拾われました~

 たいていの男性は、私が顔を上げなくても目が合うのに、彼は私が顎を持ち上げないと目線が交わらない。それが新鮮だった。

 なんて、そんなことを思ってる場合じゃない。

「というわけで、おめでとう。君、採用だから」

「え……ええと??」

 混乱状態の私に、彼は思い出したようにポケットから名刺ケースを取り出し、私に差し出す。

「……失礼。『STYLIS(スティリス)株式会社』の代表取締役、新井です」

 名刺に書かれた内容と目の前にいる人物とを見比べて絶句している私を尻目に、彼は内藤さんに歩み寄る。

「雇用契約書って、今出力できるか? それと向こうにKUROKURO(クロクロ)の担当者がいたから挨拶してきた。この名刺をデータ化して社に送っておいてくれ。これからイベント主催者と会ってくる」

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