社内溺甘コンプレックス ~俺様社長に拾われました~

 ぽかんとしてる私に用紙を差し出し、流れるように言う。

「これに目を通して、問題がなければサインして。質問があったら内藤に聞いてくれ」

「あ、はい……ええと」

 まだ状況が把握できていない私の背中をポンと叩いて、彼は美しい顔をにこりと崩す。

「よろしく、前原結愛さん」

 名前を呼ばれ、瞬時に頬が燃え上がった。

 もしかすると、彼は私が自己紹介をしてパイプ椅子に座ったときから、つまりは最初から、後ろに立って私の話を聞いていたのかもしれない。

 急に恥ずかしくなって、触れられた肩を隠すように自分の手で覆った。

< 19 / 383 >

この作品をシェア

pagetop